存在の耐えられない軽さ 【書評:小説】



この本はしんどい。けど、ぜったい読んでないと後悔してしまう本。

例えるなら、普段体を鍛えてない人が慣れない筋トレをいきなりやって全身疲労になってしまう感じに似てる。もしくは準備運動無しの100m走とかかな。

基本的なストーリーは恋愛について。束縛からの自由を求める女性と、その女性が囚われていた苦しみから彼女を救う男性。時間の流れと共に男性は女性への想いを忘れ、彼女との生活に悪い意味で慣れてしまう。

それぞれの思いやりのこころはどちらも間違っていないけれど、それぞれがある意味正反対の性質を持っていて、だからこそ双方の考え方が同時に成り立つことはありえない。この辺がパラドックスになっていて、そこから男性は過ちをおかし、女性もまた間違いを起こしてしまう。

だから、僕は読んでいて「どちらの想いが正しいのだろうか?」とひたすらに考えなければならなかった。

どちらかが想いやりのこころをあえて捨てることが出来たなら、両者が救われるのにって。

けれど、どちらの考え方も相手のことを想いやった結果に基づくもので、間違いではないのだから、二人の判断についての是非を考えるだけでもしんどい。こういうの何て表現すればいいんだろうなー、、今の僕にはうまく言葉にすることができないみたい。


でも、一つ思ったのは、誰かを想うことって大変なんだなーってこと。ネガティブな意味ではなくて、相互理解の大変さってとこを改めて知ることが出来た。これは僕のこれまでの経験では分かっていなかった部分。本書を読まないと後悔すると感じるのはそういうところからきているんだと思う。それ以外にも、過去の自分に重なるシーンがいくつかあったからかな。


僕はこの本を読んで少しだけ、ヒトとして成長出来たかなと思いました。一年後、五年後、十年後、人生の節目で改めて読み直そうと思います。

きっとその時には、また新たな気付きを本書から得ることが出来ると思うから。


存在の耐えられない軽さ (集英社文庫)