山口絵理子さんの「裸でも生きる」を読んで

「君はなんでそんなに幸せな環境にいるのに、やりたいことをやらないんだ?」


やりたいことがあるのに、それをやらない人がいるのはなぜだろう?たぶん、何かしらの理由をつけてそれをしない、もしくは出来ない人など、そういったケースは国を問わず沢山あるはず。

だが、日本は世界有数の先進国であり、本書で登場するのはアジア最貧国であるバングラデシュ。両国を同じ基準で見ることは難しい。なぜなら、バングラデシュには生きるために精一杯で、やりたいことがあっても環境がそれを絶対に許さない状態がある。お金がないことも理由の一つだし、それ以外にも政治の汚職により情勢が不安定で、それが結果として国民生活の不安定さに直結している側面もある。

例えば、政治のために度々デモが行われ、お金がない人はわずかなお金のためにそのデモに参加する。その結果警官によって殺されることもあるし、怪我をしてしまうこともある。だからもし政治がクリーンだったり、お金を稼ぐ仕組みがあれば、生活の不安定さの解消につながる一つの糸口になるのは間違いない。

この本は、バングラデシュにおける貧困を、ビジネスの仕組みを通じてどうやって改善すればよいのか、それに対する取り組みの難しさを教えてくれます。

作者の山口絵理子さんはバングラデシュのジュートという生地を使用した手作りバッグを通じ、それをビジネスの仕組みとして社会に貢献する事業を起こしました。その会社はマザーハウスという名前です。マザーハウスは手作りバッグを現地で生産し、現地の人間を採用することでバングラデシュでの雇用を創出。作られた製品は日本の百貨店やハンズなどのデパートで販売されてます。

本書の記述によると、山口絵理子さんは途上国に対して「表面的な」支援をすることに疑問を持っていたようです。だからこそ、表面的な、上からの支援ではなく、実際に現場から地域を支えるための仕組みを作ろうとしたのです。そうやって、本当にやりたいことを少しづつ実現していった姿を知り、僕はその生き方と行動力に感銘を受けました。

とてもオススメ出来る最高の一冊ですが、本書から得られた一番の学びはこの一文で表せると思います。

「君はなんでそんなに幸せな環境にいるのに、やりたいことをやらないんだ?」

裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記 (講談社BIZ)