フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?【書評:アート】
Futura.
Nicolas Cochin.
Cochin.
Trajan.
Copperplate Gothic.
Didot.
Snell Roundhand.
これらの単語を見てぱっと何のことを意味してるのかわかる方はそういないのではないでしょうか。
ではこれならどうでしょうか。
ルイヴィトンの写真です。
これは単に文字を並べただけではありません。だけど、僕も含めて殆どのひとは"並べただけ"だと思っていると思います。ちなみに、普通に並べてみるとこんな感じになります。
これだと、いつものロゴとは同じに見えません。その証拠に、一文字ずつ見ていくと確かに字のかたちは同じになるのですが、そのロゴからは落ち着きがなく高級感も感じられないのです。
では、ルイヴィトンのロゴはどんな工夫を施しているのかというと「字と字のあいだに若干の距離をとっている」のです。
ただ、それだけなのです。
でも、それだけのことでブランドのイメージに高級感をもたらし、落ち着きと「高そう」な印象を作り出しているのです。
その他の詳細については本書に写真で多くの例が掲載されているので、ご覧になってみてください。
ルイヴィトンを例にしてすこしだけ取り上げてみましたが、つまりそうなんです。最初に挙げた単語はこれらのロゴで使用されているフォントの書体なんです。
そういえば、外国に行く機会があるとその度に当然ながら「外国!」ってことを否応なく感じます。
でもその感情をなにから感じ取ったのかまで考えている人はそういないのではないでしょうか。
風景
建物
人
ぼくは本書を読んだことでこれまでに見えていなかった「フォント」が人々のマインドに及ぼす影響について気づくことができました。
外国に行った時ショッピングに出かけてみると、日本では見かけないスタイルのお店に頻繁に出くわします。でも良く考えてみるとそのお店が「何の」店なのかを理解するのは多くの場合「看板」を見て初めて分かるものではないでしょうか。
まさにその時、そこで使われているフォントが日本国内で見かけるものとは馴染みのないものであるからこそ、私たちは「外国」を感じるんだと、「フォントのふしぎ」を読んで思いました。
それ以外の要因ももちろんたくさんあると思います。でも、こういう要素もあるなと。ただそれが今まで見えていなかっただけであり、フォントという要素に僕自身が気付いていなかっただけなんだなと。
本書を読んだことでその点について気付くことができました。
出来れば、山中俊治さんの「デザインの骨格」と一緒に読んで見てください。なんとなく、似たような感性を感じることが出来ると思います。
他にも、モノに対する「気付き」の部分を重視するのであれば小宮慶一さんの「発見力養成講座」をご覧になってみてください。
両方ともオススメです。
エンジニアとしての生き方【書評:ビジネス書】
"あるエンジニアの人に、仕事人にはふたつのタイプがいるという話を聞いたことがあるんだ。「上を見て」仕事をするタイプと、「天を見て」仕事をするタイプ。上司の顔色や直近の自分の損得だけで動くのが「上を見て」仕事をする人。「天を見て」仕事をする人は、会社や上司のためではなくお客さまのためにいい仕事をする、この技術が未来につながるとか社会的に必要だという美学を貫き、自分の信条を持って動く"
これも最近どこかで拝見したものです。出処が何の本なのか忘れてしまったのですが、今回ご紹介する「エンジニアの生き方」にぴったりな言葉だと思い、ご紹介しました。
具体的には「上を見て仕事をする事と、天を見て仕事をする事」の違いについてが本書ともっとも共通しているところです。
例えばこれ。
「おれのプログラムにバグはない」
それは結構ですが、バグがないならもっと別の切り口から自分のアウトプットのクオリティを高める行動をとることは出来ます。しかしながら、その完璧であることに陶酔してさらなる高みを目指さない。これって、最初の説明にあった「上を見て仕事をする事」だし、思い込みに囚われていることだと思うんです。
その一方で、「天を見て仕事をする」ひとは、思い込みや自分の限界に囚われるのではなく、しいては限界を自分で設定することなく、お客様のために、もしくはその時の目標のためにトコトン突き詰める。
「天を見て」とはこういうことだと思います。
本書は「天を見て仕事をする」スタイルについてまとめたものです。イノベーションとかについても書かれていますが、「エンジニアのための」本ではないと思います。僕自身まったくプログラミングとかはわかりませんし、そういう意味で購入したわけでもありません。ただ、ネットや作者の考え方にひかれたので買ってみたのです。
書店でもプログラミング関係の書籍として分類されていましたが、就活中の学生さん、あとはネット業界に関わる方など、幅広い方々にとってあたらしい気付きを与えることになると思います。